「食のみやこ」を(ツッコミ的に)楽しむ
「どっか行きたい欲」(時々発症する)の赴くまま、関西近郊の旅館をいろいろ見てたら、京都の北の方にある道の駅「食のみやこ」とやらにホテルが附属していることを発見。
ほほー、泊まれるんだ、行ったことないし行ってみるか。確かかなり大きい道の駅という触れ込みだったな。
道の駅なら、道の駅自体に食べるところもあるだろうから、ホテルの晩ご飯を付けなくても楽しめるかな?
そう思い、公式ウェブサイトを検索してみたあとの記録がこちらです。
楽しそうな匂いがする公式サイト情報
「約8個分あ広大な敷地内」……?(これは今引用して気づいた) 不定冠詞のaかな? ダイソー的な「ザ・文具」に対抗心を燃やしたのだろう。
とりあえず、「園内のご案内」見てみるか。
いろいろあるなあ。
ん? ……「休業中」が、1、2……5? 半分?????
やばそうな匂いがしてきました。
なんか、車でひょろーっと旅に出てて、急に似つかわしくない西洋風の建物だと思って近付くと、「従業員数>客数」でメンテナンスが行き届かない施設の匂いが。
営業時間、見てみよう。
ほほー、お食事処が五つあるうち、三箇所は土日祝日のみ営業で、三箇所は一応週休一日で営業。
……って、タピオカエイトって何。さっきになかったんだけど。
ポニー乗馬と小さな動物園、「3月1日から休業」? でも「3月1日以降もエサやりはできます」?? なにそれ。
華々しいデビュー当時の売り文句
この道の駅、できた当初(2015年)は結構大々的に喧伝されていたのを覚えている。いろいろニュースになったりしてたし、プッシュしてるのを見た。
例えばこんなの。
休日のファミリーで出かけたくなる、素敵スポットですね。
まあ、ついでに検索太郎してみた。パソナさん。
「10次産業化拠点」と来たもんだ。
なにそれ。
上記リンクによると。
地元食材を用いたこだわりの食事や付加価値の高い加工品の開発、また農漁業体験など観光業との連携によって地域の「6次産業化」を推進するとともに、地元産業を担う次世代を育成する「人材育成」(4次産業)を加えた「10次産業化拠点」として、
なるほど、6+4で、10ね。6+4は、まあ、確かに、10か。……っていうか、私が学校で習ったのは、第一次産業(農林水産業)、第二次産業(工業)、第三次産業(商業)までだから、そもそもの6次と4次産業知らん。
6次産業ってなんですか
調べてみた。まずは、6次産業からだな。なんと、農林水産省のサイトがありました。
農山漁村の「6次産業化」とは、どのようなことなのですか。(子ども相談):農林水産省
農林漁業者(1次産業)が、農産物などの生産物の元々持っている価値をさらに高め、それにより、農林漁業者の所得(収入)を向上していくことです。生産物の価値を上げるため、農林漁業者が、農畜産物・水産物の生産だけでなく、食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)にも取り組み、それによって農林水産業を活性化させ、農山漁村の経済を豊かにしていこうとするものです。
ほほー。一次産業(農林水産業)をやっている人たちが、一次産業をやるだけでない、工業に属する食品加工(=第二次産業)もやるし、商業に属する販売(=第三次産業)も行う、ということか、まあ、道の駅とかJAの販売所とか、そういうやつか。
「6次産業」という言葉の6は、農林漁業本来の1次産業だけでなく、2次産業(工業・製造業)・3次産業(販売業・サービス業)を取り込むことから、1次産業の1×2次産業の2×3次産業の3のかけ算の6を意味しています。
……??????
なぜ掛ける。
統計の勉強
ここで、文脈と全く関係ないんですけど、ええ、全然、全く、これっぽっちも関係ないんですけど、お勉強をしましょう。
数字の使い方にもいろいろあるよ、と云うお話です。統計の初歩で学ぶことです。まあ、詳しくはリンク先を参照するほか、各自でググればいいと思います。
mathwords.net
ま、ものには数字でラベルが付くことがあるけども、四則演算(加減乗除、つまり足したり引いたり掛けたり割ったり)していいものとしちゃいけないものがあるよ、というルールです。
名義尺度……単純に記号として付けられた分類。郵便番号など。
もちろん、足したり引いたりしてもどうにもなりません。
順序尺度……順番にのみ意味があります。レースの順位など。
これも、足し算もかけ算も意味を持ちません。
間隔尺度……間隔が等しいです。温度や年号など。
この場合、足し引きは可能。かけ算割り算はできない。
比率尺度……0を持ち、比率として有効です。長さなど。
足し算引き算だけでなく、かけ算割り算もできます。
例えば、「ボク、かけっこで2位だったんだ! 1位より2倍すごいでしょう!」ということは云えません。
それは単純に、順番を表すものだから、1位は2位より優れているけれども、1位と2位、2位と3位の間隔が同じというわけではありませんね(例えばタイムを比較すると、5秒差、14秒差などはあるけれども、それは時間が比例尺度だから云えることです)。
世の中には、足したり掛けたりして意味を持つ数字と、意味を持たない数字がある、と云うことをお勉強できたでしょうか。
「食のみやこ」に何の関係もありませんけど、勉強になりましたね。
続いて、4次産業を調べた
4次産業で調べたら、「第4次産業革命」が出てきてややこしいな。
産業分類上の概念の一つ。情報産業,医療産業,教育サービス産業などの知識集約産業をいう。これらは旧来,3次産業のなかに概括されていたものであるが,特に 1960年以後3次産業部門のなかでそれぞれ性格の異なった産業の発展が著しく,一括することが無理であると考えられるようになって提唱されはじめた分類の概念である。
「知識集約産業」が、4次産業とありますな。
……あれ?
さっきのパソナさん。
地元産業を担う次世代を育成する「人材育成」(4次産業)
じんざい、いくせい……? 我田引水牽強付会? 詳しい定義がないから、何を云ってもいいと思ってらっしゃる類かしら?
足し算
さて、本題である「10次産業」に戻ろう。
どうやら、
「農林水産業の人が、自ら加工もし販売もする6次産業」
と、
「“人材育成”の4次産業」
を、
足して
「10次産業」
っていってはるみたいですわー。
ようわかりまへんなあ、どういう計算してはるんか。けったいな計算ですなあ。
諸々ツッコミ
まあ4次産業くらいまではまだいいとしても、その間の5とか7とか8とか9とか、どないなっとんねーん、という考え方を全くすっ飛ばして、
「一部で云われている(とは云え農林水産省もつかってる)6次産業と、自分たちの都合よく定義した4次産業を、合計したら10になるよね? ほら10次産業じゃん! 数字が大きいってすごいよね?!」
という、クワガタの大きさ比べの方がまだしも意味がありそうな数字のマジックによって作られた宣伝文句であることがよく分かりました。
もうそろそろ疲れてきたので、あとは細かいツッコミだけにしよう。
公式サイトの会社案内は、
まあ、パソナさんとのJVなんですねー、とか(既に見たが)。
さっきの公式から飛んだ「園内のご案内」だけど、
公式は
tango-kingdom.com
なのに、このご案内は、
tango-kingdom-howto.com
と、なぜかURLが微妙に違うとか。
まあそんなのはどうでもいいよな。
下の方のリンクにある、「丹後七姫劇団」とか、今どうなってるのかとっても気になりますね。19年9月から半年ほど更新されていないスケジュール(2020年2月現在)とか、素敵。
なんか、「平安神宮という絶好の観光スポットの隣であるにも関わらず、どうも微妙な集客絶賛営業中の十二十二に併設されていた劇団」を思い出しました。
えーっと、京都Sushi劇場と、キーボードに入力したくなくなる名称の劇団でしたね。
秋元康さんプロデュースの劇場が長期休館 平安神宮に昨秋開場|経済|地域のニュース|京都新聞
うち、比較的近所なんですが、このニュース見て、「え、どこにそんなのあったん?」というのが最初の感想でした。土産物屋だと思ってた*1。
ちなみに検索太郎さんしたら、その前身の「丹後あじわいの郷」の情報もあって、いろいろ勉強になりました。
あ、このブログ見てたら、旧丹後あじわいの郷のマップにある「丹後王国タワー(閉鎖中)」に記憶が呼び覚まされた。
検索して出てきたのは、廃墟好きの皆さんによるサイト。しかしこれ、高松伸設計なんですね……。廃墟……。
おわりに〜東京という「外資系」〜
最後に少しだけマジレスすると、こういう「地域活性化」のありかた、本当に地方を潰していると思う。
「衰退化に危機を持つ地方
→その地に発しない広告的プロデュースを依頼
→人材派遣会社が中間搾取
→広告打てるうちは人が来るがそのうちに衰退
→廃墟化進行」
これ、あちこちで起こってることかと思う。淡路島のウェスティンの隣(淡路花舞台)とか。作るだけ作って、あとのメンテナンスは何も考えなくて、作ってほったらかしになっているのを、その土地から離れない人たちが俯きながら守っていく。上は、責任をとるという形で厄介払いされ、また新しい他所からの人がやってきて土地の資源を食い荒らして帰っていく。
一見、その地に雇用を生み出しているように見えるけど、ここでパソナが噛んでくる、というのは、そこに「人材派遣」という形で儲かるからだろうな。となると、結局大きなお金は地方に落ちず、本来もっともらっていいはずの賃金が、責任をとりたくない経営者と人材派遣の名のもと中間搾取する派遣会社との結託によって減らされていってしまう。
これ、誰が喜んでいるんでしょうね。一部にいい思いはさせているとは思うんだけど、それはどうもトリクルダウンせず、一部にとどまっているように思う。
ふと連想するのは、いわゆる「外資系」。すべてがすべてそうだとは云わないけど、リゾート開発で外資が入ると、大きなお金は外資に行って結局その土地の人は労働力として安く買いたたかれるだけ、という話がある。経済的植民地支配のようなもんだ。
これを、日本国内の、東京と地方でやっているだけではないのだろうか。その地方のことをあまり考えない、東京という「外資系」。
まあ、私もそういうリゾート全く行かないわけじゃないから、あまり大きなことは云えないんだけど(現に「どっか行きたい欲」に応じて、アジアのリゾートホテル旅行記をこの一週くらい見まくった)、こういう、「地方を一見活性化させるように見せかけて結局は地方の搾取に過ぎない地方活性化」が、ますます東京一極集中を加速化させてるんだろうなあ、と思うと、暗澹たる気持ちになった。そりゃ若者東京行くさ。搾取する側になってやるとしか思わんわ。
……あれ? タイトルで書いた割には「楽しむ」要素がなくなったな。まあいいか。